真白きだけの花火よ霞草

三十路で始めるロックンロール。いまだ売れていない天才(自称)バンドマンが語る音楽、文学、哲学、詩、料理、日々、あるいは旅。

瀬門春壱の「週報」7/6〜7/12

身体の調子悪く、ということはそのまま精神の調子の悪さにも繋がるわけで、尼崎でも飲みすぎることなく、ある意味不発で帰宅し、ぼけた頭でちびちびと作業を進めていく。虫の知らせ、というか、不吉な予感というものがレインコートの中にまで忍び込んできている。ああ、だろうなあ。と思う。お前は最大限努力したか? 慮ったか? 答えはいつも風の中。俺? 俺は俺というものがいまだになんなのかすら分かっていない。
 
 
 
 
某ライブハウスにて、新店長の就任祝いを兼ねて仲間たちと一日遊び、飲み倒す。イベント終わり、家の近くの「皇君菜館」に行って打ち上げ(でも三宮の方が美味しかったね)、そのまま銭湯に行き、帰宅。あひるの子のようにぞろぞろと連中もついてくるがかまわず俺は就寝。
朝起きてもなかなか帰ろうとしない男たちに心の中で呪詛を浴びせる。天使のむきえび、みたいな女の子ばかりが泊まりに来てくれればよいのに(なにを言ってるんだ)。
そこから二日間頑張って働く。ええい! 絶対にこんな生活とおさらばしてやる! 見ておけよ! と、くたびれすぎていつもの坂を自転車で登れずフラフラになっている朝、固く心にそう誓う。
 
 
 
 
甲東園「バードランド」にて、東京行き前最後の練習。何人かはそのまま甲東園に残るようだが、俺は正月ぶりに(というか基本的には正月にしか帰らないのだが)伊丹の実家に帰省する。
塚口から電車を乗り換えて、稲野(俺が家を出て最初に暮らした街だ)ーー新伊丹ーーそして伊丹へたどり着く。
今頃俺の同級生たちはどこでなにをしているのだろう? 本当にこの街を出てから、誰ともまったく会わない。俺だけがなにかとんでもないことをしてしまっているのか? 俺は街から弾かれてしまっているのか? 本当に俺に青春と呼べるような時間はあったのか? みんなはなにを考え、どうやって暮らしているのか? 生だの死だの、あるいは愛や恋、夢のことなど考えたりしているのだろうか? それとも金? 誰もが金のことしか考えていないのだろうか。
大雨の中、駅から乗り合わせたバスから降りて家まで帰る道すがら、俺はずっとそんなことを考えていた。
 
久しぶりに両親と話し、ご相伴に与り早めに眠る。明日から東京。
 
 
 
 
戦士たちの朝は早い。五時にドラムの三木と、俺たちがよく遊んだ公園に集まり、レンタカーで甲東園に向かう。
廣内、ケントと合流し、尼崎まで辻君を迎えに行く。
野犬に襲われたようなボロボロの出で立ちで現れた辻君を見て、あんまり乗せて行きたくなかったが、一人で歌は唄えない、仕方なく乗り込んでもらい、一同東京、八王子を目目指す。
一時間しか寝れずに、さっきまで練習してたっす。などと、体力があるを通り越して不気味、もはや意味不明なことをケントが言っている間に、真っ先に酒をかっ喰らい、早く眠ったという話だったはずの廣内が口を開けてもう寝ている。早い。最近、ベースを弾いているか酒をかっ喰らっているかパンを喰っているか寝ているか、これ以外のことをやっている彼を見たことがないのだが大丈夫だろうか。普通に心配になるが、まあこいつの心配なんてしていられないのは、相変わらず辻君が訳のわからない発言を連発するからで、やれ自分の人生で一番楽しかったのは自然学校だの、そこで好きな子が歯磨きしているのが新鮮だっただの、思わず歯磨きしてる! と言ってしまっただの、なんの発展性もない話を喋り続けているので、俺が「俺の人生で一番楽しいのは今やけどな」と言うと、なんて寂しい人生なんや! こんな今が一番楽しいだなんて! などと腹の立つことを真剣に(そう、彼はいつだって真剣なのだ)言い、自分の自然学校がどれだけ楽しかったのかをまた俺に教えてくれるのだった。いらんて。
 
パーキング・エリアに寄り、音楽を流すプレイヤーを手に入れて旅は続く。運転はずっと三木君。ごくろうさま。車内は常に爆笑の嵐。疲れてきて、俺も少しうとうとし始める。廣内は、時々申し訳ないと思っているのか、起きては会話に参加するそぶりを見せるが、またすぐに眠りに就く。
やがて八王子に到着。田舎だ。田舎。まぎれもない田舎。俺たちの間に戦慄が走る。「俺の初めての東京、ここっすか」とケントが落ち込んでいるので、「大丈夫、ここは東京とは呼ばないよ」と言ってあげる(すまない八王子)。
名物「スタ丼」を食べて(三木は大盛り、廣内は丼+油そば。みんな若くないか?)、昼寝しよう、、、としていると、武士から連絡が入る。「東京でライブなんやて? 前乗りしてるねん」武士はいつでもヒマを持て余しているのだ。仕方なく付き合ってやることにする。
二人で喫茶店に行き(しかし我々は一体何百回喫茶店を共にしたのだろうか)、近況を報告しあい(ってこないだ会ったばっかりやんけ)、お互いへらず口を叩き合い、そのまま武士は俺たちのバンドのリハを見たあと「駅まで送ってくれるんやろ?」とにやり、笑いながら言い放ち、「今日のライブ、見えたな」などとこいつもまた訳の分からないことを言うと改札の向こうへ消えていった。わざわざこんな遠いところまで来てくれてありがとう。愛を。
 
ライブが始まるまでに、どっかで缶ビールでもこうてこましたろ、とぶらついて、無事にゲット・ザ・ビアーして店の入り口まで戻ってくると、王様一同&今回の企画者であるSABOTEN MUSICのこすけ君が一緒になって座り込み、尼崎の空気を作り上げている。
すわ、一体何事じゃい。とそっちの方に寄っていくと、ケントが今の政治が、日本がいかにおかしいのかをみんなにアジテートしていた。好き者やなあ、と遠巻きに見ていたが話題を振られ、一気に燃えて喋り倒し、気づけば今の日本が悪いのは震災で大地の龍脈が崩れたからだ、と身振り手振りで熱弁。あっけにとられるみんなを尻目に俺は再びゲット・ザ・ビアー。
 
ライブ終わり、一人で中華屋で打ち上げ、メンバーはみな日帰りだが俺はせっかくなのでこのまま東京に残る。
調布まで送ってもらい、ここが舞城の小説に出てくる調布かあ、と感慨に耽り、コンビニで酒を買い、漫画喫茶へイン。いやあ、最近の漫画喫茶ってこんなに快適なんですね。部屋広い。足伸ばせる。綺麗。シャワー浴びれる。はああああ開放感。知らない街で、俺、一人、旅の真っ最中!
早速ちびちびと酒を飲み始めるも、疲労困憊、一瞬で眠ってしまう俺だった。いや、だから、本当に、インターネットで、やらしいサイトなんて、見てないってば。