真白きだけの花火よ霞草

三十路で始めるロックンロール。いまだ売れていない天才(自称)バンドマンが語る音楽、文学、哲学、詩、料理、日々、あるいは旅。

新開地・IKEA・三十を迎えたG2と王子公園の使徒襲来

開設したばかりのはてなブログを、二年前に行った稚内の旅行記でどうにかお茶を濁していたのは、月頭に父方の祖父が亡くなった関係だ。

祖父のことについて、あらためて書こうと思う。実はある程度下書きができているのだが、やはり最低限の推敲はしたい。

それから、舞城王太郎『山ん中の獅見朋成雄』、磯崎憲一郎『終の住処』読み終わった。この二冊の感想も書きたい。

しかしまあ毎日というのはなかなか落ち着くことのないもので、ライブハウスの仕事を日数的には減らしてもらい、じゃあ最もやりたかった小説を書くこと、音楽を作ることに向き合えているかというとそうじゃなく、なにかしらの連絡、転居の手続き(そう、もうすぐ住み慣れたこの街を越すのだ)、明日のレコーディング、自分たちで立ち上げようとしているプロジェクトの構成案、Music Videoの構成案。

と、金にならぬことばかりが自分の身に起こり続けているのが現実である。

そういう現実が、あ、泡沫。なんて消えてしまう前に、ちょっとここ最近にあった出来事を書き連ねていきたい。

 

新開地に行った

f:id:haruichi_semon:20190209132618j:plain

思想の強い本屋だ

転居するってえことはやっぱりいるんでい、おお、なにがよ、ってもちろん銭でい!

というワケで、新居の近くで朝から昼までの短い時間だけでも働ける場所はないのか、と探して見つけたのはここ新開地の某小料理屋。

それにしても、金は天下の回りものってんなら、もしかして俺って天下に含まれとらんのかいな。などと独りごちつつ店の暖簾をくぐり、って嘘、暖簾なかったと思う、だからまあ偽の記憶の暖簾をくぐって扉を開くと、そこには、わあ昔ながらの小料理屋。ひええ美味そう。お客さんの数は、、、まあそこそこ。よし、みんな真昼間からお酒飲んでるな。金持ってなさそうやけど大丈夫かな。ああ、宝払いか。海賊だもんな(違う)。

うんうん頷いていると奥にいる大将と目が合い、互い礼を交わしてすぐさま面接へ。

およそ一分で働くことが決まったのでした。だいじょうぶか?

 

IKEAに行った

f:id:haruichi_semon:20190209133808j:plain

なんじゃこの写真

すいません写真は寂れた普通のホームセンターみたいになってますが、ちゃんとIKEA神戸に行きました。

ポートライナーから左手に工業地帯と海を見つつ、最寄り南公園駅で降りてすぐ。

いいですね。IKEA。昔は家具なんてまったく興味なくて最もかったるいトピックの一つだったはずなのですが、、、本棚と間接照明と机と椅子と、、、いつの間に俺はこんなにも物欲まみれの人間になったのでしょうか?

起きて半畳寝て一畳、それさえあれば生きていけるなどと嘯きながら部屋の中には少しばかりの本と業務用トリスウイスキー4Lのペットボトルしかなかったあの頃はいったいなんだったんでしょうか。

 

f:id:haruichi_semon:20190209134303j:plain

これで1700円くらい。安っ

ましてやIKEAで飯を喰うなんて!

 

ああ平和なるこの生活が

なぜに我らを蝕むのか

 ーーーエレファントカシマシ『偶成』

 

かつて宮本がそう唄ったことを思い出しながら、ワタクシはビールを飲み、奢ってもらった料理に舌鼓を打つのでした。

 

三十歳を迎えた辻君

最近全然飲みに行っていなかったので、たまには行こうぜ。と、三十歳を迎えたばかりの辻君と練習終わりに二人で飲みに行きました。

どこか昼から飲める場所はないか、と探していると、

「最近さあ、俺憂鬱やねん」と辻君。

「なんでや、三十歳なったばっかやんけ」

「やからやん。やっぱいざ三十歳になってまうと、いろいろ考えるねんて」

「まあそりゃ分かるけどなあ。俺も実際三十なって、ああこのままでいいんかな。とか、やっぱりごっつい不安なるもん。ボードレールが言うみたいに、時間っていう怪物がさ。要は差し迫ってきてるってワケ」

「そやねん。そこで俺はニーチェのニヒリズムで対抗しようとしたワケよ。虚無によって執着を捨てる、っていう」

「まあ、しかしそれを成し遂げたんは結局仏陀だけかもしらんで。ニーチェも結局発狂して死んでまってるでな」

「そやねん。結局ニヒリズム、っていうのが、現実に生きていく上で使われへん。現実がそれを上回った時、俺が今日までやってきたこと、哲学とか、音楽とかはさあ、やっぱり無駄やったんかなあ、って思ってん。ほんでな、こないだKと飲みに行ってきてんやんかあ。ほんなら、酒飲んでさ、ごっつい憂鬱になって」

「負の強化やな。アルコールは良くないで」

「そやねん。でも、飲んでさ。なんかどうでもよくなってもうてさあ」

「分かるわあ。あるよな」

「ペットボトルの水買って帰ってきてんけどさ」

「喉渇くからなあ」

「うん。で、どうでもええねん! 思ってさ。でな。その水飲んでは、部屋の中にぺっぺって吐いてん

えっ?

「ぺっ、ぺっぺって。もし誰かに死ね言われたら死んでたわ。でも俺は水吐いてん。ぺっぺって

「……」

起きたら水浸しやったわ

 

どうにか開いているお好み焼き屋を見つけて入ると、誰もいない店の奥で細いピエロみたいなオッサンがキャベツを刻んでいました。

椅子に座り、ビールとお好み焼きと焼きそばを注文。目の前の鉄板で焼いてくれるのですが、これがどう見てもあんまり美味しそうじゃない。

で、実際食べてみてもやっぱり美味しくない。焼きそばべちゃべちゃ。でもまあ、値段も安いしこんなもんやろう、それよりせっかくの酒の席、話に花を咲かせましょうと言わんばかりに音楽のこと、哲学のこと、未来のことについて真剣に話し合う俺たち。

「だから、結局バンドっていうのはさあ」

熱くなってきた俺が身振り手振りも交えて話していると、

B型やから

と言って、突然カウンターの向こうに座っていた細いピエロみたいなオッサンが立ち上がり、俺と辻君を見て笑いました。にやあ。ところどころ見える銀歯がそこはかとなく不気味です。っていうかB型やから、って、なに? 混乱している俺たちを嘲るかのように、細いピエロみたいなオッサンが言いました。

一匹狼やねん

混乱はやがて混沌(ケイオス)へ。まるでいきなりフルーツバスケットと唱えられたガキのように俺の頭はぐるぐるぐるぐる回ります。

「僕やったら、無理やなあ。炒め物ずっとやってきて、人の下につくんが嫌やってんね。だからここまでやってきたよ。音楽もね、唄は天才やったよ。天才って言われとった。でも、楽器も楽譜も読まれへんから音大には推薦できひんって言われてんな

「え、そうなんですか? でも、、、」そんなことってあるんかいな、という空気が俺たちの間に共通していることを察知した辻君が果敢にも切り込もうとしますが、

できひんかってん」と細いピエロみたいなオッサンは一蹴、ひたすら自分だけがカードをドローしていきます。

ほんで、、、炒め物しはったんですね」と俺はワケの分からないことを言い、なんとか秩序を取り戻そうとしましたが、ガリピエロはあっさりそれを無視、そのまま地面にしゃがんでカウンターに手をつくと、俺と辻君を見つめながら「あ~あ~川の流れのよぅぅに~」と歌い始めました。しかもけっこうメロディが違う。

 

歌い終わると立ち上がり、うっすら微笑みながら無言でこっちを見つめているガリエロ(もはや使徒として認定)。俺はなんとか場の空気を変えようと、ガリエロに

「カラオケとかはよく行きはるんですか?」と聞きました。

「あんまり行かへん」とガリエロ。

「でも、やっぱりモテるでしょ。それだけ唄がねえ、お上手やと」と俺が言うと、待ってましたとばかりにガリエロは死の咢を開き、銀歯を見せつつ、

「そんなことないねん。僕、声高いから女の人の歌よう唄うんよお。あのな、薬師丸ひろ子って分かる? 『セーラー服と機関銃』が有名なんよ。でもな、僕はな、そこで『探偵物語』唄うねん」と言ってにやり。どうでもええわボケ!

「だからな、''コレ''って言われるのが嫌やねん」と言ってガリエロは右手の甲を左手の頬に当てるポーズ。

「ああ、オカマって言われるんですね」と辻が言うと、ガリエロは

「僕なあ、オカマって言われるのが一番嫌いやねん」と再びしゃがみこみ、カウンターの向こうからまたもや俺と辻君を見つめてそう言いました。

 

店を出た辻君が開口一番、「天才やった唄を捨ててまでやってきた炒め物のレベルとちゃうやろ!」と言い放ち、俺たちは爆笑しながらあのべちゃべちゃした焼きそばのことをいつまでもいつまでも忘れられませんでした。

さらばガリエロ、ニーチェが遣わせた虚無よりの使者よ。

 

f:id:haruichi_semon:20190209142739j:plain

口直しに串カツ屋へ

スタッフのお別れ会

職場を卒業するスタッフを送る会、ということで待ち合わせの中華料理屋『マルマン』にたどり着くも、やはり時間は守られず、いつも正直者が馬鹿を見る、しかしどうせならとことん馬鹿を見てやろうではないかと思ったワタクシはトイレにかかってあった大仏の面を奪取、おもむろに被ると棚にあった子供の人形をあやし、約十分間もの間、一人でみんなが来るのを待ち続けたのでした。

料理はいつも通り大変美味しかったです。この日は会社からご馳走になりました。

 

f:id:haruichi_semon:20190209143113j:plain

もはやホラーの領域

 

洋食屋なんじゃろへ行った

f:id:haruichi_semon:20190209135148j:plain

隠れた大衆洋食屋の名店

かつて王子公園に住んでいた頃行った『なんじゃろ』へ。日替わりランチ(¥700)をオーダー。これが思ったよりも美味しくてびっくり。

 

f:id:haruichi_semon:20190209143923j:plain

ソースが絶妙。

 

 

 

この日はちゃんと自分でお金を払いました。